アナーキー(無政府状態)
Anarchy
国家の上位に立ち、法を執行できる世界政府が存在しないという国際社会の構造的条件。「混乱」ではなく「中央権威の不在」を指す専門用語で、国際政治学の議論のほぼすべてがこの前提から出発します。
関連:自助/ウォルツ『国際政治の理論』(記事は準備中)
Glossary of International Politics
議論の前提として使われる用語を、理論・安全保障・国際政治経済・国際制度・国際法・外交の六分野に分けて整理しました。
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国家の上位に立ち、法を執行できる世界政府が存在しないという国際社会の構造的条件。「混乱」ではなく「中央権威の不在」を指す専門用語で、国際政治学の議論のほぼすべてがこの前提から出発します。
関連:自助/ウォルツ『国際政治の理論』(記事は準備中)
権力への欲求を人間本性に根ざすものと捉え、国際政治を権力闘争として理解する立場。国家指導者の思慮(プルーデンス)を重視する点で、後の構造重視の議論と異なります。
関連:モーゲンソー『国際政治』
国家の内部要因ではなく、アナーキーと能力の分布という国際システムの構造から国家行動を説明する立場。人間本性への言及を排し、国際政治理論を演繹的な体系にしようとしました。
関連:ウォルツ『国際政治の理論』(記事は準備中)
他国の意図が確認できない以上、安全の最大化は力の最大化によってしか達成できず、大国は地域覇権を目指さざるをえないと論じる立場。ミアシャイマーが代表的論者です。
関連:ミアシャイマー『大国政治の悲劇』(記事は準備中)
アナーキーと国家中心性というネオリアリズムの前提を受け入れたうえで、国際制度が情報を提供し取引費用と裏切りの誘因を下げることで、協力が持続しうると論じる立場。
関連:コヘイン=ナイ『パワーと相互依存』(記事は準備中)
国家の利益は所与ではなく、アイデンティティや共有された観念によって形づくられるとする立場。「アナーキーとは国家がそれに与える意味次第である」という命題がよく知られています。
関連:規範のライフサイクル/アンダーソン『想像の共同体』(記事は準備中)
国家間には単なる力関係を超えた共通の規則と制度からなる「国際社会」が成立していると捉える立場。国際システム・国際社会・世界社会という三層の区別を用います。
関連:ルールに基づく国際秩序
説明の原因をどこに求めるかの区分。個人(指導者の認知)、国家(政体・国内政治)、国際システム(構造)の三層に分けるのが標準で、同じ事件でも層が違えば答えが変わります。
関連:ウォルツ『国際政治の理論』(記事は準備中)
協力から自国がどれだけ得るか(絶対的利得)を重視するか、相手より多く得られるか(相対的利得)を重視するか。現実主義は後者を、制度論は前者を強調し、協力可能性の評価が分かれます。
関連:ネオリベラル制度論
各主体が合理的に自己利益を追求すると、双方にとってより悪い結果に落ち着くゲーム構造。軍拡や貿易摩擦の説明に使われ、繰り返しと制度が協力を可能にする条件の分析につながります。
関連:国際レジーム
外交交渉を、国際交渉のテーブルと国内批准のテーブルが同時に進む二重の駆け引きとして捉える枠組み。国内で通る合意の範囲(ウィンセット)が交渉力を左右します。
関連:聴衆費用
戦争の危険が最も高まるのは、挑戦国の力が支配国に追いつき、かつ挑戦国が既存秩序に不満を抱いているときだとする議論。均衡ではなく力の接近を危険視する点で勢力均衡論と対照的です。
関連:トゥキディデスの罠
台頭国が既存の覇権国に迫るとき、双方が戦争を望まなくても構造的な圧力と恐怖が衝突を招きやすくなるという命題。アリソンが米中関係の分析に用いて広まりました。
関連:アリソン『米中戦争前夜』(記事は準備中)
その時代の技術・地理・軍事ドクトリンのもとで、攻撃と防御のどちらが有利かという条件。攻撃有利のとき安全保障のジレンマは深刻になり、防御有利なら緩和されると考えられます。
関連:安全保障のジレンマ
突出した力を持つ国が現れると、他国が軍備増強や同盟によって対抗し、力の分布が均衡へ引き戻される傾向。政策としての勢力均衡と、意図せず生じる結果としての勢力均衡は区別されます。
関連:バランシング/ウォルツ『国際政治の理論』(記事は準備中)
強い側に対抗するのではなく、その側につくことで安全や利益を確保しようとする行動。抵抗の見込みが薄い弱小国や、勝ち馬から分け前を得ようとする場合に選ばれやすいとされます。
関連:バランシング
脅威への対抗の負担を他国に押し付け、自らは温存しようとする行動。多極構造で起こりやすく、対応の遅れが脅威の増大を許した例として1930年代がしばしば挙げられます。
関連:ミアシャイマー『大国政治の悲劇』(記事は準備中)
同盟国に「見捨てられる」不安と、同盟国の紛争に「巻き込まれる」不安が同時に存在し、一方を減らそうとすると他方が増える構造。日米同盟をめぐる議論の基本枠組みです。
関連:拡大抑止
核保有国が、非核保有の同盟国に対して自国の核戦力による抑止を提供すること。日本やNATO諸国の安全保障政策の前提であり、拡大抑止の核領域における具体化です。
関連:拡大抑止
双方が先制攻撃を受けても壊滅的な報復を行える状態にあり、その結果としてどちらも先に撃てなくなる均衡。冷戦期の米ソ核抑止の基本構図とされました。
関連:第二撃能力
先制攻撃を受けた後でも報復核攻撃を実行できる残存能力。潜水艦発射弾道ミサイルなどによって確保され、これがあるかどうかで核抑止の安定性が大きく変わります。
関連:相互確証破壊
潜在的な敵を含めて広く加盟させ、侵略した国に全員で対抗すると事前に約束する仕組み。特定の敵を想定する同盟とは原理が異なり、国連はこの構想に立っています。
安全保障の対象を国家から個々の人間へ移し、紛争だけでなく貧困・感染症・環境劣化からの「恐怖と欠乏からの自由」を含めて捉える考え方。日本の外交政策の柱の一つでもあります。
関連:保護する責任
ある問題を「存亡に関わる脅威」として語ることで、通常の政治手続きを超える例外的措置を正当化する言語行為。安全保障を客観的状態ではなく政治的構築として捉える視点です。
関連:コンストラクティビズム
長射程ミサイルや潜水艦などによって、敵の戦力が特定の地域に接近すること自体を阻み、進入後の自由な行動も封じる戦略・能力。西太平洋の軍事バランス論の中心概念です。
関連:抑止
平時とも有事とも言い切れない、武力攻撃に至らない範囲での実力行使や既成事実化。海上保安機関や民兵の活用が典型で、既存の法的・軍事的対応の隙間を突く点に特徴があります。
関連:ハイブリッド戦
正規軍による作戦に、非正規部隊、サイバー攻撃、情報工作、経済的圧力を組み合わせ、攻撃の主体と性質をあいまいにする手法。帰属の特定が難しく、対応の敷居を上げます。
関連:グレーゾーン事態
先制攻撃は攻撃が差し迫っている状況での機先の制圧、予防戦争は将来の力関係の悪化を見越した早期の開戦を指します。国際法上、後者の正当化は一般に認められていません。
相手の意図や能力を誤って読み取ること。自国の行動は防御的で自明だと感じ、相手の同種の行動は攻撃的だと解釈する非対称な認知の偏りが、危機を悪化させます。
関連:安全保障のジレンマ
国家間に相互に影響し合う関係が存在し、一方の政策変更が他方に費用を及ぼす状態。単なる結びつきの多さではなく、断ち切るときの費用の大きさが政治的に重要になります。
関連:コヘイン=ナイ『パワーと相互依存』(記事は準備中)
航行の自由、安定した通貨体制、感染症対策のように、誰も排除できず消費が競合しない便益。誰も費用を負担したがらないため、供給が慢性的に不足しがちです。
関連:フリーライダー問題
第二次大戦後、ドルを基軸とする固定相場制とIMF・世界銀行を柱に構築された国際経済秩序。1971年の金・ドル交換停止で固定相場は崩れましたが、制度的な枠組みは残りました。
関連:埋め込まれた自由主義
対外的には貿易の自由化を進めつつ、国内では雇用と社会保障によって調整の痛みを吸収するという戦後秩序の妥協。この均衡の崩れが、今日の反グローバル化の背景として論じられます。
関連:保護主義
重要物資・技術・データの供給網や基盤を、他国からの供給途絶や不当な影響力行使から守るという政策領域。効率性を一定程度犠牲にして強靱性を確保する選択を伴います。
金融決済網や半導体供給網などのネットワークの結節点を握る国が、その位置を利用して他国の情報を得たり接続を遮断したりすること。相互依存が平和の条件ではなく圧力手段になる側面です。
関連:敏感性と脆弱性
貿易・金融・渡航の制限によって相手国の政策変更を迫る手段。全面的な禁輸から、個人や団体を狙う「スマート・サンクション」まで幅があり、効果の測定は容易ではありません。
関連:強制/経済的ステイトクラフト
関税や数量制限、補助金などによって国内産業を国際競争から保護する政策。安全保障や雇用を理由に正当化されることが多く、報復の連鎖を招きやすい点が問題とされます。
関連:埋め込まれた自由主義
調達先の分散、在庫の積み増し、同盟国内での生産回帰などによって、供給網の途絶リスクを下げる取り組み。効率一辺倒の最適化からの転換を意味します。
関連:経済安全保障
経済関係を全面的に切り離すのがデカップリング、関係は保ちつつ致命的な依存だけを減らすのがデリスキング。後者はより現実的な政策目標として近年用いられています。
関連:経済安全保障
返済困難な規模の融資によって、債務国の政策や資産に対する影響力を得るという主張。実証的には過度な一般化を戒める研究も多く、事例ごとの検証が必要な概念です。
関連:経済的ステイトクラフト
特定の争点領域において、行為主体の期待が収斂する原則・規範・規則・意思決定手続きの総体。条約や機構より広く、明文化されていない慣行も含みます。
関連:コヘイン=ナイ『パワーと相互依存』(記事は準備中)
条約に基づいて設立され、常設の事務局と意思決定機関を持つ組織。国家の道具にすぎないのか、独自の主体性を持つのかは、理論的立場によって評価が分かれます。
関連:国際レジーム
三か国以上が、個別の事情に左右されない一般的な行動原則に基づいて協調すること。単に参加国が多いことではなく、原則の一般性が定義の核心です。
関連:ミニラテラリズム
問題解決に必要な最小限の少数国だけで協力枠組みを作る方式。合意形成は速い一方、正統性と包摂性を欠くという批判を受けます。クアッドなどが例に挙げられます。
関連:クアッド
安保理常任理事国5か国が、実質事項に関する決議の成立を単独で阻止できる権限。大国を国連にとどめるための設計であると同時に、大国が当事者の紛争では対応を不可能にします。
関連:国連安全保障理事会
停戦合意の監視や治安維持のために、当事者の同意を得て展開される国連の活動。近年は文民保護や国家建設まで任務が拡大し、同意・中立・自衛という原則との緊張が生じています。
関連:保護する責任
内政不干渉、全会一致、法的拘束より対話と漸進を重んじる東南アジアの地域協力の作法。合意の敷居が低い反面、実効的な紛争解決には弱いと評価されます。
関連:内政不干渉原則
条約に基づかない首脳レベルの協議体。G7は価値を共有する先進国の結束を、G20は新興国を含む代表性を強みとし、正統性と実効性のどちらを取るかという緊張を体現しています。
関連:首脳外交
複数の国際制度が重なり合う領域で、自国に有利な結論が得られそうな場を選んで問題を持ち込む行動。制度の多層化が進むほど起こりやすくなります。
関連:国際レジーム
領域内で最高の権威を持ち(対内主権)、外部からの命令に服さない(対外主権)という国家の属性。国際政治のすべての制度が、この擬制の上に組み立てられています。
1648年の講和を象徴的な起点として語られる、主権国家を単位とする国際秩序。近年は起源としての1648年を過度に神話化しているという歴史学からの批判も強まっています。
関連:主権
他国の国内管轄事項に強制的に介入してはならないという国際法上の原則。人権侵害や人道危機への対応との間で、しばしば正面から衝突します。
関連:保護する責任
武力攻撃が発生した場合に、安保理が必要な措置をとるまでの間、実力で自国を防衛する権利。必要性と均衡性という要件によって行使の範囲が画されます。
関連:集団的自衛権
規範の起業家による提唱、閾値を超えた後の連鎖的普及、そして当然視される内面化という三段階で、国際規範の定着過程を捉えるモデル。対人地雷禁止などが事例とされます。
関連:コンストラクティビズム
法的拘束力を持たないが、実際には行動を方向づける宣言・指針・行動規範の総称。合意が容易な反面、履行の強制ができないという性格を持ちます。
関連:国際レジーム
領海・排他的経済水域・大陸棚・公海などの区分と、そこでの権利義務を定める包括的な条約。「海の憲法」と呼ばれ、海洋秩序をめぐる紛争の法的基準となっています。
関連:航行の自由
ある政治的実体を国家として扱うという他国の意思表示。国家性を創り出すのか、既存の事実を確認するにすぎないのかをめぐって、創設的効果説と宣言的効果説が対立します。
関連:主権
軍事力や経済力によって、報酬と処罰を通じて他者の行動を変えさせる力。何を持っているかという資源と、実際に結果を出せるかという転換能力は別物である点に注意が必要です。
関連:ソフト・パワー
強制や買収ではなく、魅力によって他者が自国と同じ結果を望むようにする力。文化・政治的価値・対外政策の正統性を源泉とし、発信量ではなく受け手の評価が決め手になります。
関連:ナイ『ソフト・パワー』(記事は準備中)
ハードとソフトの手段を、状況に応じて有効に組み合わせる戦略的な能力。両者はしばしば相反するため、組み合わせ自体が独立した技量として扱われます。
関連:ソフト・パワー
相手国政府ではなく、相手国の世論に直接働きかける外交活動。放送・文化交流・留学生受け入れなどが手段となり、一方的な広報より双方向の関係構築が有効とされます。
関連:ソフト・パワー
首脳が直接会談することで、事務レベルでは越えられない政治的決断を行う外交手法。決着が速い一方、準備不足のまま臨むと失敗の代償も大きくなります。
関連:G7とG20
政府代表ではなく、研究者や元政府高官などが非公式に行う対話。公式の立場に縛られずに選択肢を探れるため、行き詰まった局面の突破口になることがあります。
関連:危機管理
単独で秩序を左右する力はないが、制度づくりや仲介、争点を絞った専門的貢献によって影響力を発揮する国。日本・オーストラリア・カナダなどの外交を語る枠組みです。
関連:多国間主義
安全保障や技術で他国に決定的に依存せず、自ら選択できる余地を確保しようとする志向。EUの議論で前面に出ますが、同盟関係との両立が課題になります。
関連:経済安全保障
国家が長期的な目標を定め、軍事・外交・経済のあらゆる手段を目的と結びつける包括的構想。手段と目的の均衡を欠いた構想は、過剰拡張を招くと警告されます。
関連:覇権
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